長期投資の最善の選択肢のひとつ
投資をしている人、興味のある人なら誰でも知っているであろうS&Pやオルカン。NISAの投資先としても圧倒的な強さを誇っている。米国株(S&P)や世界各国(オールカントリー)の株式指数に投資するインデックス・ファンドで多くの経済評論家やインフルエンサーがこぞって勧めている。
私自身、米国・世界経済がこれからも中長期的に発展を続けると思っているし、それが正しければこれらに投資する株式指数も当然上がっていくはず。あれこれ悩まずに済むし、手数料もアクティブ・ファンドと違って安い。長期投資における最善の選択肢のひとつであることに間違いはないと思う。特に初心者でまだあまり知識がない人や仕事が多忙で投資のために時間を割くのが難しい人には最適だろう。
猫も杓子も・・S&P、オルカンに潜む危うさ
一方で、インデックス一択の動きに漠然としたモヤモヤ感も感じる。猫も杓子もS&P、オルカン、こんな風に皆がみな、疑いもせず同じ方向に向けて動き出した時にはロクなことが起きたためしがないからだ。バブル崩壊などはその最たる例だろう。現在のインデックス一択の動きにはちょっとそれに似た危うさも感じる。
もし仮にこの世の中がインデックス・ファンドを買う人だけになったらどうなるだろう。株価指数に含まれる銘柄も玉石混合で、GoogleやAppleのように世界経済を牽引するような企業もあれば、最早時代の潮流に合わなくなった企業もあるだろう。それらを十把ひとからげにしたインデックス・ファンドは本当に最強なのだろうか?
1人ひとりが正しくても・・「合成の誤謬」の落とし穴
インデックス投信は例えば日経225など株価指数に連動するよう組入銘柄を構成し運用している。では、その225銘柄が最強軍団かと言えばもちろんそうではない。指数に採用されていない銘柄ながら、本来のフェアバリューから離れて割安に放置されている銘柄や、これから大きな成長を秘めている銘柄もあるからだ。一方で、私も昔、「ウォール街のランダムウォーカー」を読んだし、こうした有望な銘柄を見つけるのが簡単ではないからこそインデックスに投資するのだと言う理屈もよく分かる。
しかし、問題はマーケット全体でインデックス・ファンドの占める割合が昔よりはるかに大きくなっていることだ。フェアバリューを無視して売買を行うインデックス・ファンドの割合が増えればマーケットに歪みが生じるし、その歪みがインデックス・ファンドのパフォーマンスを低下させる可能性がある。その分アクティブ・ファンドや個別銘柄投資には今まで以上に大きなチャンスが生まれることになるのではないかと見ている。実際、米国などではアクティブ回帰の動きも出てきているようだ。
今のインデックス・ファンド一択のトレンドは、1人ひとり(マクロ)がやっていることは正しけど、それらが合成された時、全体(マクロ)としてはという好まざる結果(パフォーマンスの低下)を招く、いわゆる「合成の誤謬」の危険性をはらんでいるように感じる。
※私の好きなファンドマネージャーの堀子英司さんもこうしたインデックス一辺倒の動きに対して、「ロジャーパパ米国投資」の対談の中で指数バブルとして、警鐘を鳴らしています。興味のある方は下記動画(16分あたりから)をご覧ください。

FIREの達成に大きく寄与した個別銘柄投資
もちろん、アクティブ・ファンド、個別銘柄投資にも問題はある。コストが高いことや、インデックス以上のパフォーマンスを上げてくれる銘柄を見つけ出すのがそう簡単ではないということだ。じゃあ、私はどうしているかというと、今は個別銘柄投資とアクティブ・ファンドが中心となっている。そちらの方が優れていると言いたい訳ではない。ただ、個別銘柄やアクティブに投資する人たちがいてこそ、マーケットはより健全に機能すると言うことは知っておいて欲しい。インデックス投資だけでフェアバリューを精査する投資家がいなくなると、マーケットの価格形成機能が働かなくなるからだ。
もうひとつ。私の場合、これまで、個別銘柄への投資や、アクティブ運用で痛い目にあったことも度々あるが、逆にインデックスでは考えられないようなパフォーマンスを上げて、それがFIREに大きく寄与したのも事実だ。必ず成功するという保証はないが、リスクをとって成功した人が大きなリターンを得るのは資本主義の必定だろう。
これまでお話ししたように、インデックス、アクティブ(個別銘柄投資含む)それぞれにメリット・デメリットがある。どちらが良い悪いという訳ではないが、何も考えずに皆がオルカン、S&Pにしているから、自分もそうしようという考えは捨てた方が良いと思う。投資しないよりは遥かにマシだが、良くも悪くも平均点のパフォーマンスで終わるだろう。その平均点もインデックスのシェアが大きくなった歪みのせいで今後下がって行くかもしれない。出来ればどちらも経験してみて、その中から、自分なりの投資スタイルを確立することをお勧めしたい。