サロン化した銀行支店
数年前からメガバンクの支店が大きく様変わりしている。気づいている人も多いと思うが、一昔前はカウンターに沢山の窓口があって入出金や振込などを受け付けるレイアウトになっていた。しかし、今やそうした事務の窓口はひとつかふたつと極端に減って、その代わりに運用相談など個別ブースをメインとした作りになっている。以前と比べて随分使いにくくなったと感じているひとも多いと思うが、この変化は、メインの顧客ターゲットをマス層から富裕層へとシフトしたからに他ならない。
銀行ビジネスの変化
銀行の一番大きな収益源は預金と貸金の利率差(利鞘、例えば2%で預金を集めて5%で貸せば3%が収益として抜ける)による収益だ。これは今も昔も変わらない。その為、駅前の一等地に支店を構え、多くの行員を配置して、沢山の預金を集めることが銀行の至上命題だった。幅広い層に口座を作ってもらい、メインバンクにしてもらうことで預金ボリュームを増やす。そのことに大きな意味があったからだ。
しかし長らく続いた低金利政策で利鞘収益は大きく減った。そのような状況下で単独では儲からないが、預金を集めるには有効だった振込や納税などの周辺事務は、コスト削減で人が減る中、大きな負担となっていった。一方、それらの業務は銀行がなくても今やネットやコンビニがあれば全部代替できるし、利用する側からすれば9時から15時の営業時間に縛られることもない。
こうした背景から、減少した利鞘を補うビジネスとして登場したのが投信など金融商品販売の手数料ビジネスだ。これまで銀行がやってきた振込など儲からない周辺事務はネットやコンビニに任せて、ビジネスの軸足をマス層から富裕層に切り替えよう。銀行が運用相談をメインとする証券会社のようにサロン化した背景にはそんな思惑が透けて見える。
儲からない客は来るな!?
先日、どうしてもリアル店舗でしか出来ない手続きがあって、某メガバンク支店に足を運んだが窓口はふたつしかなく(しかも実際に稼働しているのはひとつ!)、口座開設や住所変更などは予約制になっていた。予約がなければ運用相談客の方が優先される。待ち人数が増えても後方にいる行員が窓口を開けて対応することもない。これはもう富裕層など、運用相談以外の客は来るな!と言ってるも同然だろう。
前述のように今や銀行での手続きの殆どがネットやコンビニで代替できるし、営業時間も短く、うんざりするほど待たされる銀行にわざわざ足を運ぶ必要はない。振込や納税など旧来の支店の決済手段としての役割は既に終えつつあるから、このトレンドは仕方のないものだとは思う。しかし、こうした富裕層ビジネスが上手く行くかは大いに疑問がある。その件についてはまた別の機会で話したいと思う。