三菱UFJ銀行が20年ぶりに新店舗を出店するらしい。三菱UFJ銀行だけでなく、メガバンクがここ数年間、店舗の統廃合を徹底して進めてきたことを振り返れば、大きな方針転換とも言える。
この方針転換は、日銀の政策金利引き上げにより金利が上昇し、利鞘(預金と貸金の金利差)が大きくなってきたことが大きい。特に金利上昇時は貸金金利の方が先に上昇するので、この後のさらなる金利上昇は銀行にとっては大きな収益チャンスとなる。
銀行の貸金のほとんどは変動金利となっているので、既存貸金のストック収益も大きくなるし、新たに貸出額を増やせば、その分だけ収益チャンスは増える。まさにボリュームを増やすことが至上命題で、これは大数の法則をもとにコストを算出し、契約件数を増やせば増やすほど儲かる保険会社の仕組みとも似ている。
私は平成元年に銀行に入ったのだが、当時は郵貯で7%、都市銀行でも5〜6%くらいの金利がついていたのを記憶している。もちろん貸金金利はそれよりずっと高かった。そんな時代だったので、お客さんから預金を集めることが至上命題だったし、ノルマもキツかった。店頭でもお客さんが定期預金の解約に来たら必死で止めていた時代だったのだ。
でもゼロ金利が常態化し、利鞘で稼げなくなった時代が長期間続いたことにより、預金を集めるインセンティブが大幅に低下した。その結果、メガバンクはコスト削減のため、店舗を統廃合したり、支店で投資信託や外貨保険を売る手数料ビジネスに走ったのだ。
だから、今回の三菱UFJ銀行の新店舗出店は金利のある時代、すなわち利鞘で稼げる時代への転換を見据えて、軌道修正を図ったように見える。顧客基盤を広げて、預貸金ボリュームを増やす重要性を再認識したのだろう。
ただ、時代は大きく変わりつつある。銀行の支店は何故サロン化したのか?でも述べたように、今や銀行に行かなくても、振込・入出金・納税・社会保険料の支払いなど殆どのことが、ネットやコンビニで代行できる。しかも9時〜15時に縛られることもない。わざわざ銀行に足を運んで、手続きしたいという人がどれくらいいるだろうか?おまけに不要な投資商品まで勧誘される。
私のメインバンクは今は住信SBIネット銀行だが、メガバンクより金利や手数料の条件が良くて、ずっと使いやすい。電子マネーが普及し、給与支払いもデジタルでの支払いが認められるようになったこの時代、メガバンクの優位性は以前よりずっと低くなりつつある。
色々疑問は尽きないが、そんなことは私の杞憂に過ぎないのか?他のメガバンクも追随の動きを見せるのか?元銀行員として今後の動きを追いかけていきたい。