トランプ大統領の関税政策などによって、マーケットが大荒れとなっている。昨日のダウは42000ドル割れとなり、ナスダックも19000ポイント前半まで沈んだ。中国はもちろん、カナダやメキシコにも25%の関税を強行しようとしており、日本も対象となる可能性が高まっている。こうした自国第一主義の政策が更なるインフレや消費者マインドの停滞を招いてリセッション入りするのではないかという恐れが次第に現実味を帯びてきたことが投資家のリスク回避を加速させている。
これまでトランプはビジネスマンであり、マーケットフレンドリーとも言われてきたし、それは嘘ではないと思うけど、今回はマーケットが荒れようが徹底的にやり抜くつもりのようだ。最近のFOXでのインタビューで「一時的な混乱や痛みは仕方がない。経済を強くするため短気ではなく長期的な視点が必要だ」という趣旨の発言をしている。恐らく、政策を遂行すれば時間は少々かかっても偉大なアメリカを復活させられると信じているのだろう。
トランプ政権の政策の是非はともかくとして、我々投資家もここ数年で起きたパラダイムシフトを受け入れざるを得なくなるのではないかと思う。それはグローバリズムから反グローバリズムの流れだ。これまで人やモノ、サービスが国境を超えて自由に移動すること、その動きを加速させることが人々を豊かにする鍵だとされてきた。それは嘘ではないし、そのおかげで我々は素晴らしい製品やサービスを安価に利用できるようになった。
しかしグローバリズムの加速は様々な痛みや混乱も生じさせているのも事実だ。自国産業の衰退や貧富の差の拡大、移民との軋轢による国民の不満は、世界各国で極右、あるいは極左的な動きを加速させている。恐ろしいのはアメリカだけでなく、こうした自国第一主義、反グローバリズムが今後世界的に強まっていくことだ。もはや国連もWTOもまともに機能しているとは思えない。
我々個人投資家はどうすべきか?ひとつは、マーケットの大きな調整に備えるべきだろう。近い将来、今の動きが、さらに大きなうねりとなり、マーケットの下げを加速してパニック的な暴落を引き起こす可能性があると私は思っている。でもピンチはチャンスでもある。株式などはバーゲンセールになるだろうから、暴落に備えて、利益が出ているもの、割高になっていると感じるものがあれば売って現金に変えておくべきだろう。
もうひとつは、反グローバリズムの流れでその価値を高めるだろう資産を増やすことだ。米国が自国主義をさらに強めていけば、良くも悪くも米ドルからの資本逃避が強まるはずだ。米ドルが基軸通貨の役割を終えるとまでは思わないが、自国主義や反グローバリズムが強まるほど、米国債などを売って、その代替となる資産へシフトしていく可能性が高い。その筆頭はやはりゴールド以外にないと考える。金価格の高値更新は既にそうした動きを先取りしたもののように見える。
トランプは個人的には好きではないが、昨年の暗殺事件が未遂となり、ガッツポーズを見せたあの瞬間から、その強運に驚かされたし、本人も天啓と感じたのだと思う。その意味で大統領となり、現在のような反グローバリズム的な政策で波乱を巻き起こすことは歴史的な必然だったのかもしれない。我々個人投資家にできることは少ないけど、さらなる嵐に備えてやれるだけのことはやっておくべきだろう。